君が好きになるまで、好きでいていいですか?

「ほっとけない、俺の勝手だからちゃんと言うこと聞いて大人しく待ってて」

大きな手でポンポンと軽く小突きながら
万由をそこに残して、社内へ戻って行った。



「……………」


ベンチの背凭れに背中を預けて、空を見上げる


いい天気だなぁ………………

そう思っても、心の中は晴れる事はない
気が付くとまたポロポロと止めどない涙が目尻からこぼれ落ちる


こんな事なら付き合わなくて幼馴染みのままにしておけばよかったんだろうか………


「ほっとけないって、ははっ……ほっとかれたくない人にはほっとかれてるしぃ………」

自虐的な考えしか浮かばない

もう、ダメなんだろうか。もしダメになって別れる事になったらまた、幼馴染みに戻れるの?

そんなの無理だ…………
和音さんとの慧ちゃんを私が認められる筈がない

もう、前とは違う



後藤のジャケットからほのかなシトラスの香りがする

香水かコロン……? さすが営業

暖かな陽射しに柑橘系の香りが心地好くて
眠気を誘う

慧ちゃんはベビースモーカーだから、タバコの匂いしかしなかったもんなぁ…………



「………………」






「……………沢村さん?」

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