君が好きになるまで、好きでいていいですか?

次の日は二人で始業5分前に出社した

酷い顔は昨日休んだこともあって、歩美さんのメイク術とマスクでばっちり誤魔化して、でもそのせいで周りには無理しないでねと気を使われた。

ずる休みなのに………


「昨日のノンアルコールのビール、あれ後藤さんからの差し入れだから、今日会ったらお礼言わないと」

「……………」


渋々お昼は食堂へ出向いた

会える可能性は50% 
挨拶を交わせるのは更に50% 
そしてお礼を言うために会話出来るのは更にその50%


ほぼ不可能だよね 彼は基本忙しい筈

それに会社では話掛けない筈


そう、今までは偶然が偶然を呼んだ偶然だった だから今日はたぶん会わない






「ねぇ、聞いたぁ?!昨日後藤課長………」

ん?

万由達がついている席の後ろの席で会話する女子社員たち

「屋上でキスしてたんだってぇぇ」


「えええェェっ!!」
 

 ……………はぁっ?

万由の手がピタリッと止まり、隣の歩美と顔を見合わす

歩美が万由を黙ったまま指差すと、それを思いっきり否定する様に首を振った

チラリとその話の方に目を向ける



「昨日朝の会議が終わる課長を待ってた総務課の子が、課長を見掛けて追いかけたらしいんだけど……………探しに屋上に上がったらそこで」

「キスしてたの?」

声が小さくてなって、若干身を乗り出して聞き耳をたてた

「屋上のベンチで課長が女の子の肩を抱いて、こぅ………角度をつけながら………」

ジェスチャーを交えた話の内容は、どう考えても万由が相手だ

「………………っ」

ジッと万由を見つめる歩美に目を丸くして顔をプルプル振る
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