君が好きになるまで、好きでいていいですか?
部署に帰って、声を潜めたまま自分達の隣同士のデスクで溜め息をつく
いったいなんなんだ?!
意味分かんない………
キスって、キスなんか、キス…………ん?
一瞬頭に浮かんだふわりとした感覚
夢の中でのあの温かな……………唇の……?って
え…………いやいや、夢の中だったげど…………
「あ……………………」
「ん?万由?」
「あ"あ"っ!!」
髪型がぐしゃぐしゃになるほど頭を掻きながら、突然大声を上げて立ち上がる
次の瞬間、今度はそのまま座り込みデスクに顔埋めた
「万由?」
覚えてる………目を覚ますその前に、唇に残る優しいキスの感覚、名前を呼ばれて
柑橘系のシトラスの香りと一緒に、慧ちゃんとは違った煙草の匂い。
柔らかな唇がゆっくり重なってきて、何度も何度も…………はっ
「…………………………………………………っ!!」
「へぇ……………やっぱりシタんだぁ」
ニヤニヤと三日月の様な歩美の目が、万由を追い詰める
「だだだだだっだって、私は…………」
不可抗力だ!!
「眠ってる時にキスってさぁ……昼間の屋上でって…………なんかエロぃよねぇ………」
そう言われてまた、思わず再現感覚が甦る
「!!!」
いやいや、これってセクハラだ、セクハラだよねぇ
セクハラって……………エロぃ
「イケメンのやる事はセクハラにならないんじゃない?」
どんな理屈よ!!
さすがにお礼どころか、会うのも目を合わす事さえ、出来ない。
後藤課長、貴方一体なんて事を…………
「沢村さん、正直に答えてくれる?」