君が好きになるまで、好きでいていいですか?
そう言ってロッカーで桜井さんに呼び止められた
更衣室の隅に追いやられ、凄みを帯びて詰め寄られた
「…………後藤課長のキスの相手は沢村さんじゃないでしょうねぇ」
「………………違います」
いつの間にか始まったキスの相手探し
どうも課長は絶対に口を割らないらしい
だから私も何もなかったんだと、私じゃないと…………目を逸らしながら否定する
「私はその日は会社休んでましたから……」
そう、朝会社で気分が悪くて帰ったんだ
だから会社の屋上にはいなかった
「じゃあ誰よ」
「そっ、そんなの知りませんよ…………」
「ふう~ん。貴女って彼氏いるのに課長にも言い寄ったりして、本当に気に入らないんだけど」
言い寄ったりなんてしてないし、気に入らないなんて、なんでこの人にそんな事言われなきゃいけないの?
「まさか、あの木原歩美じゃないでしょうねぇ………」
へっ?歩美さん?
「あの子もだいぶ後藤課長に言い寄ってた時があったし…………」
はっ? 何言ってるのこの人
「相変わらず、自分主体の女王様なんですね、桜井さんって」
そう声がする方を見ると、腕組みして桜井亜沙美を睨みつける歩美
「なによ、木原さんだって前に後藤課長に振られた癖に、次の日平気な顔して本当に神経図太い性格よね」
えっ…………?
「よく言いますねぇ………
大体その私の告白を覗き見して次の日にみんなに言いふらしたのは誰でしたっけ?
本当に性格悪くて呆れますよ。自分だって何度も告白して、振られてるのにめげてないじゃないですか…………」
えええっ…………?!
「あ、歩美さん?」
「万由、さっ帰ろう。そんな人ほっといてね」