君が好きになるまで、好きでいていいですか?

歩美の凄みを帯びた睨みが桜井を怯ませる

歩美さん………全然負けてない

「本当に腹立つぅ」と唇を噛む桜井を後に、歩美に腕を引かれ更衣室を出た



……………歩美さん、後藤課長の事を好きだったの? それはいつの事?


『この際後藤さんにしたら?』

もし、好きならどうしてそんな事………




「まぁ~ゆぅちゃぁん。」


「へっ? あ、ひぃでっ………ひぃしゃい」

更衣室からエレベーターに乗り込んだ途端、歩美が万由の正面に向きを変えて両頬を思いっきり摘まんできた

「なに考え込んでいるのかなぁ?桜井さんの言ったことなんてもぅ2年以上前、万由の入社前のころなんだからね。」

そう言って更に指に力を入れる

「ひぃひゃいぃ~」

「ま、後藤さんだって一年に何人も告白されてるんだから、昔の事なんて忘れちゃってるだろうし」

「……………」


「あんたは、それよりちゃんとしなきゃいけない事あるでしょっ! いい加減ちゃんとでなさい携帯」

「……………」


あれから暫くして、ずっと音沙汰のなかった慧ちゃんからメールや電話がかかってくる様になった


メールには、一度ちゃんと話がしたいから会いたいって…………でも

会って、振られる勇気がない
冷静に話し合いが出来るかも自信がない
どうしてこんなになっちゃったんだろ………




♪~♪~♪~ ♪~♪~♪~………………

「万由、鳴ってる」

食堂の机の上に置いた万由の携帯が、いつもの慧斗からの着信音を響かせる

「…………分かってる、ほっといて。」

< 99 / 333 >

この作品をシェア

pagetop