君が好きになるまで、好きでいていいですか?
歩美の凄みを帯びた睨みが桜井を怯ませる
歩美さん………全然負けてない
「本当に腹立つぅ」と唇を噛む桜井を後に、歩美に腕を引かれ更衣室を出た
……………歩美さん、後藤課長の事を好きだったの? それはいつの事?
『この際後藤さんにしたら?』
もし、好きならどうしてそんな事………
「まぁ~ゆぅちゃぁん。」
「へっ? あ、ひぃでっ………ひぃしゃい」
更衣室からエレベーターに乗り込んだ途端、歩美が万由の正面に向きを変えて両頬を思いっきり摘まんできた
「なに考え込んでいるのかなぁ?桜井さんの言ったことなんてもぅ2年以上前、万由の入社前のころなんだからね。」
そう言って更に指に力を入れる
「ひぃひゃいぃ~」
「ま、後藤さんだって一年に何人も告白されてるんだから、昔の事なんて忘れちゃってるだろうし」
「……………」
「あんたは、それよりちゃんとしなきゃいけない事あるでしょっ! いい加減ちゃんとでなさい携帯」
「……………」
あれから暫くして、ずっと音沙汰のなかった慧ちゃんからメールや電話がかかってくる様になった
メールには、一度ちゃんと話がしたいから会いたいって…………でも
会って、振られる勇気がない
冷静に話し合いが出来るかも自信がない
どうしてこんなになっちゃったんだろ………
♪~♪~♪~ ♪~♪~♪~………………
「万由、鳴ってる」
食堂の机の上に置いた万由の携帯が、いつもの慧斗からの着信音を響かせる
「…………分かってる、ほっといて。」