mariage~酒と肴、それから恋~
「久しぶりじゃん、元気だったか?」


「ええ、まぁ…」

全力で愛想笑い。

気まずい。

あいさつ済んだら、早くどっか行ってよ。


大将も、じゅんくんもこっち見てる。

最悪。


そんな私の内心なんてお構いなしに、

「先に始めといて」

連れの2人を先に座敷に行かせて、良いとも言ってないのに、図々しく私の横に座ってきた。


こういう、ちょっと強引なところ、すごく好きだった。


年上で、スマートにスーツを着こなして、さらっと眼鏡をかけて、デキる良い男風に見える。

ちょっとエリートで、そういう自信に満ちたとこがすごく魅力的だった。


俺様で、意地悪で。

眼鏡の奥に光るSっぽい瞳に見つめられると、足に力が入らなくなるくらいゾクゾクした。


かつて、抱き合ったまま、このまま死んでも良いと思ったくらい愛した男。


まるで麻薬のように、のめり込んで中毒になった。

すべて捨てて、夢中になることが恋だと思っていた。


今はそういうハラハラいらないの。

30超えたら、日常を生きなきゃいけないの。


「懐かしいな~、何年ぶりだろ」
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