mariage~酒と肴、それから恋~
「さぁ~、何年だっけ」

私は、とぼけて首をひねる。


――3年だ。

5年付き合って別れて、3年ぶりにこんなところで再会なんて。


別れたあと、この男以上の男なんてもう現れないと本気で思って、しばらく毎晩泣いたことを思い出した。

そんなこともあった。


「カンナ、男できた?」


いきなり遠慮ない質問。

やめてよ、こんなところで。

じゅんくん見てるんだから!


いたたまれずに精算して店を出る。

スタスタ駅に向かう私を、奴はついてくる。


「なぁ、何怒ってんだよ」


「怒ってないし。ついてこないで」


「あん時は悪かったよ。何か、あんな終わり方になって」


「別にもう良いよ、終わったことだし」


「だったら、こっち見ろって」

肩をつかんで無理矢理振り向かされた。


「ちょっと、やめてよ!」


「なぁ、カンナ、」

しかめた私の顔を見て、何かを悟ったように男は笑った。

「まだ俺のこと好きとか?」


「――はぁ?」


「また連絡してよ」


自信たっぷりな表情。もう私の上に立ってるつもり?


「ふざけないで!」


「ふざけてねぇよ、俺もカンナのこと忘れらんなかったんだ。今日会えて、まじ嬉しかったし」


「私はもう…―」


「男いねぇんだろ?それって、まだ俺のこと引きずってるってことだろ?」
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