mariage~酒と肴、それから恋~
「違…」


唖然とした。自惚れないでよ!


彼氏いないのは、別にあんたを引きずってるからって訳じゃなくて、単に私がモテないだけっていうか、出会いがないってだけなんだって!!


自分で思って、泣きそう(苦笑)

上手く説明できる自信がなくて、黙ってしまう。


何か言わなきゃ肯定してるみたいじゃん。あーー、もう!!


「カンナさん!」


まばらに明かりがついてる夜の商店街に私を呼ぶ声が響く。

こっちに向かって駆けてくる板前の白い服。


「じゅんくん!?」


え?どうしたの?!

じゅんくんは、私の正面で立ち止まって言った。

「忘れ物」


「えっ、私お店に何か忘れてた?ありがと」

手を差し出すも、じゅんくんの両手は手ぶらのまま。


「だし巻き玉子、まだ半分しか食べてなかったじゃないすか。カンナさん、いつも全部食べてくれるのに」

じゅんくんは、悲しそうな目をして訴えてきた。

「店に戻ってくれませんか?」


私の横の男は、早く帰れよと言わんばかりの面倒くさそうな目でじゅんくんを見た。


じゅんくんは、じっと男の顔を見た。

その牽制するような強い目に、不謹慎にも心臓がトクンと音を立てた。
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