mariage~酒と肴、それから恋~
男はじゅんくんをにらみ返し、私の背を押す。

「行こうぜ、カンナ」


「カンナさん!」

じゅんくんは私の手首をつかんで引き止めた。

冷たくて硬い手の感触に、やばい、ドキドキする。


「店員が何なんだ!金は払ってんだから、もうほっとけよ!お前まさか、カンナのこと狙ってんの?」

男は不愉快に歪めた顔をじゅんくんに向けた。


「ちょっと、すぐにそういうこと言うのやめてよ!!じゅんくんはそういうんじゃない!」

この男、付き合っていた頃、私がちょっと男の同僚と歩いてただけで、浮気だって怒った。

自分のことを棚に上げて。


「客の女に手出そうなんて、公私混同じゃねぇの。店主に言うぞ」


立ちくらみがした。

と思ったら違って、じゅんくんに肩を抱き寄せられてた。

じゅんくんと密着してる。


骨太の身体。背中にまわされた腕の感触に、現状が理解できなくて頭が真っ白。


「どうぞ。俺がカンナさんに惚れてんの、大将公認なんで」
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