mariage~酒と肴、それから恋~
だから、別れて良かったんだ。

そう思えるようになるまで、ちょっと時間かかったけど。


今は完全に別れて良かったって思えてる。

そんな自分にちょっと驚いてる。


結婚指輪を指摘されて、気まずくなったのか男はすぐに居なくなった。


じゅんくんから離れて、ガバッと頭を下げる。

「ごめんね、助かった。あいつ昔っから強引で」


「…いえ」


「気づいてたんだね、あいつが結婚してんの」


「はい」

真面目な顔でじゅんくんはうなずいた。


「あーあ、じゅんくんには知られたくなかったなぁ。最低だもんね、不倫なんて。

店では清楚な女風を装ってたんだけどなぁ、バレちゃったか」


後ろめたくて、じゅんくんの顔が見れなくて、視線を反らしてわざと明るく話した。


「機転きかせてくれたんだよね?
私を助けようと思って、私のこと好きなふりしてくれて、ありがとうね」

自業自得。開き直って、笑顔を向ける。


「ふりなんかじゃない」


「え?」

予想外。じゅんくんは真剣な瞳で私を見ていた。

吸い寄せられるように視線が合って、身体が緊張で固まる。


「だし巻き玉子とじゃなくて、俺と添い遂げること考えてみてもらえませんか?」
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