mariage~酒と肴、それから恋~
じゅんくんは、何人かいる板前の一人。

短い黒髪に、きりっとした眉、白い板前スタイルが様になってる男前だ。

年は31歳。

ちょっと寡黙で、多くは語らない方だけど、きちんと礼儀正しくて。


若いけど腕は確かで大将の信頼も厚い、店のNo.2ってとこ。

包丁捌きも最高だけど、私的に一番は、だし巻き玉子。


そんな私(カンナ)は、33歳。独身。普通の会社員。

30手前で、5年も付き合った男と別れてから3年、まーーったく出会いがなくって、彼氏無し。


一人で、月に一回くらい、この行きつけの魚が美味しい居酒屋さんに行くことが密かな楽しみ。


生け簀があって、安くて新鮮なのが売り。

かなり繁盛してる(サラリーマン率高い)、隠れた名店ってやつだ。


いつもカウンターに座って、何、食べようかなぁ~って、ショーケースに並ぶ魚を眺める。

基本、その日のお店のお勧めお任せを頼んでるんだけど。


来る度に欠かせないのは、じゅんくんが焼いてくれるだし巻き玉子と、じゅんくんが選んでくれる日本酒。


「カンナちゃん、これサービスね」

大将が私の前に小皿を置いてパチンとウインクした。


「わぁ~!嬉しい!!ありがとうございます♪♪う~ん、大将の鰹の塩タタキはシビれる~」


「カンナちゃんて、いつも美味しそうに食べてくれて、料理人を喜ばしてくれるねぇ~」

大将は、私が食べている姿を嬉しそうに見ている。
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