mariage~酒と肴、それから恋~
「大将!ちょっと何言ってんすか!」

焦ったのか、じゅんくんは吹き出しそうになりながら反論した。

じゅんくんにしては珍しい大きな声。


「照れんな、照れんな。カンナちゃんのお陰でだし巻き玉子の腕も上がって、店としても万々歳!良かったじゃねぇか」

はっはっは!と高らかに大将は笑って、じゅんくんの背中を叩いた。

そうなんだ。何か嬉しい。


店員同士の関係が良さそうなところも居心地の良さに繋がってるんだろうな。


大将にからかわれて、耳をうっすら赤くしたじゅんくんは気まずそうに軽く咳払いして、居直る。


純朴そうで、愛(う)い。ますますお酒も美味しくなるってもんだ(笑)


「好みの日本酒探すの楽しいですから、是非色々試してみて下さい」


「うん。ありがとう、じゅんくん」


私は常連さんだから。

一人だから、たくさん注文できないけど、大事にされてるのが分かる。


美味しいお酒に肴に、仲の良い店員さんに。

大人になったからこそ楽しめてること。


日々のストレスがリセットされる。

魂の洗濯っていうの?

そんなこと言ったら、じゅんくんは大袈裟とかって笑うんだろうけど、きっと嬉しそうに笑ってくれるんだろうな。

社交辞令、営業スマイルでもいいんだ。
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