逃げ惑う恋心(短編集)
「大ちゃんって身長いくつなの?」
「俺おっきいよ、百八十七」
「やっぱり百九十近いんだね。横に立たれると岩か巨木かと思うもん」
「岩か巨木ってひどいな」
実際その巨体でわたしを隠してしまっているのだから、あながち間違いではない。
大ちゃんは好物が米と肉というストレートな嗜好の持ち主であるし、その大きな口でもりもり食べてこんなに大きくなったのかしら。特に最近の趣味は筋トレらしく、数年前初めて会ったときよりもずっとがたいが良くなっている。
大川大輝という名前通りに大きく成長しているなと思った。
「歌詠ちゃんもいっぱい食べて俺みたいに大きくなるといいよ」
「大ちゃんみたいに大きくなってどうするの」
でも確かに大ちゃんくらい身長があったら、見える景色もだいぶ変わってくるんだろうな。ていうかまずその身長があったら役者はやっていないかもしれない。
「大ちゃんって身長だけじゃなく、筋肉とかおっぱいも立派だもんね」
「女の子がおっぱいとか言わないの」
「おっぱい触ってみてもいい?」
「いいけどおっぱい連呼しないの」
「じゃあお乳触らせて」
「お乳もやだなあ」
手を伸ばして触った大ちゃんの胸はすごい筋肉で。胸板が厚いというのはこういうことなんだろうなと思った。