出会いはカフェで
「真紀が帰ってくる」
スマホに目を向けながら
誠さんは私たちに言った
私はトイレ、拓海さんは浴室に隠れる
もちろん、カバンや靴を持って。
真紀さんが部屋に入ったところを
鍵をかけ、ドアには買ってきた
プラスチック製のチェーンを
シューズ扉にくくりつけて
南京錠をすることになっている
絶対、真紀さんを逃さない。
息を潜めていたら
ガチャ……と音がした
「ただいまー」
「誠ー?」
真紀さんの声と足音がした
カチャン…
リビングのドアが閉まる音と
はっきり聞こえない会話
今だと思い
私と拓海さんは作業に取り掛かる
悪いことをしているような気分になってしまうが……致し方ない。