私がアイツに恋する時。



「何?」


なるべく目を合わせないようにして聞いた。



「ああ。秋穂知らね?」



…私に用じゃなかったんだね。



「今購買に行ってるよ。」

「そっか……じゃあまたでいいや。
ってどうしてわざわざ?
関わるな、じゃなかったのか?」



…まぁそうなんだけど。

私に用だったら聞きたいことあったから。



「……腕。」

「腕?」

「その左腕のキズ…どうし「あー。ここにいたんだ、僚太くん。」」


頭の中まで響く猫なで声。


ヤバい。


慌てて中林に背を向ける。



「ん?誰かに用なの?」


私のことは言わないで………。


「ああ。秋穂にちょっとな。でもいねぇみたい。」


体の力が抜けそうだった。

よかった…。



「じゃあ今日琴奈ね、食堂なの。ついてきて。」

「んーはいはい。」



無理矢理腕を組まされてその場から離れていった。


そして私は何もなかったかのように晴香たちのところに戻った。



「何だったの?」

「秋穂に用だって。」

「ふーん。さっきのことかな?」

「かもね……。」



…結局キズのこと聞けなかったな。


でも間違いないよ。

あの腕は美優に───



……あのときありがとうって言ったっけ?

中林は自分が刺されても…私のこと守ってくれた。

そして私がそのことに気づかないようにウソついてる。



……秋穂が言ってたみたいに本当に優しい奴なのかな?


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