鏡花水月
自由を求めて
思いっきり息を吸うと、新鮮な空気が肺に満たされた。
梅雨が終わり、じりじりと太陽が私を照り付ける。
額から流れる汗をぬぐいながら太陽を見上げてみる。
「・・・暑い」
返事がないとわかっていながら悪態をつく私。
だけど暑くても汗をかいていても、私の心は期待でいっぱいだった。
「せっかく“あの場所”から逃げてきたんだもん。思いっきり高校生活を満喫してやる」
そんな決意とともに一歩を踏み出し校門をくぐり職員室へ向かう。
普通の生徒は登校すると教室に向かうだろう。
だけど私は今日からこの青崎学園に通う転入生で。
担任の先生と教室へ行かなければならなかった。
・・・それは別にいい。
そんなの別にいいんだけど。
「・・・鬱陶しいな」
廊下を歩いていると突き刺さる視線。視線。視線。
転入生ってことを差し引いても異常で。
「なにかついているのか」と思って制服や顔を見ても何もなくて。
「・・・早くいこ」
足早に去っていくしかなかった。