鏡花水月
「神崎詩織だな?じゃあ教室行くぞー」
「はい」
あーだりぃ、とか言いながら歩き出す担任。
あきらかに着崩したスーツ。寝癖がついている髪。
谷岡賢治先生だっけ?若くて結構かっこいいのにもったいない。
てかそれでいいのか。先生って。
そうこう考えているうちに教室についたようで、
「じゃあ入るぞー」
扉を開き中に入る先生に続いて私も入る。
するとやはり突き刺さる視線。
「転入生だ。自己紹介」
「神崎詩織です。都会から来ました。どうぞよろしくお願いします!」
そうやって微笑めば返ってくる返事。返してくれた人には笑顔を送る。
・・・笑顔や話し方は完璧なはずだ。
私はそういう家・・・神崎財閥に生まれてきたのだから。
そんなことを考えていると先生が
「神崎は鏡花に入るからな。この学校に慣れてなくて戸惑うから教えてあげるんだぞー」
え?
「先生、それってなんですか?」
「ああ?お前胸元の校章に薔薇がついてるだろ?それが証だよ」
は?待って、意味が解らない。
「そんなのに入った覚えはないんですが」