リアルラヴァーズ
「ごめん、りょう、ホームルームが長引いた!」
たかが2分くらいで……と思わなくも無いが、遅れてしまったのは悪いこと。仕方が無いので私は素直に謝る。
「サボればいいのに」
口を尖らせて、すねる仕草が、とても愛らしく、彼が3つ年上とは思えない。思わず笑みが浮かぶ。
「ダメ! 皆勤賞狙ってるもん」
「真面目だなー」
彼はそう呟くと、私の手をとり、歩き出す。
それにしても……。この人は、本当に目立つ。
男も女も関係無しに、多くの人が足を止め、彼を見るのだ。
その度に、私は色々な気持ちが混ざり合い、嫌な気分になる。
悔しいから、彼のちょびっと伸び尻尾のような、乱雑に縛られた髪を引っ張った。
「いたっ!」
彼、りょうはどうしたの? というような目をし、私に振り返る。
素直に自分の気持ちを出す気は無かったので、私は話題を作ろうと慌てて辺りを見回した。
目の端に移るのは、デパートのビルに掲げられた大きなポスター。
そこにはSnowDarkの5人と、新しいCDのタイトル、そしてそのCDの発売日が記載されていた。
あぁ、私の恋人は、こんなに凄い人なのだ。
改めて実感させられる。
「うっわーあんな大きなポスター貼ってあるんだ、最悪」
彼は、藤原稜弥は、メディアに出ることをあまり好んでないそうだ。
だから今も嫌な顔をし、そのポスターを見つめて、いや、睨んでいる。
これは以前聞いた話だが、SnowDarkの5人はお遊びで作った曲を、気まぐれで応募したらお偉いさんの目に留まったらしくデビュー。
ブームはすぐ去り、すぐに自分たちは終わるだろうと5人は楽観視していたが、彼らがデビューして3年以上、その人気は衰えを見せない。安定した地位さえ見せている。
真剣に歌手を夢見ている人には羨ましい話だろうが、事の大きさに、りょうは嫌がっているのも事実だ。皮肉なものである。