リアルラヴァーズ
「あ、おれ、おれー」
そしてこれまたお決まりの突っ込みを心の中で、おれおれ詐欺かよ!
ついでにこの声は、りょうである。
「どうぞー」
私は玄関を開けると、彼に家の中に入るよう促した。
彼はマイペースというか自己中というか、自由奔放なところがあるので、こうして突然家を訪ねてくるのはしょっちゅうである。
最初は驚いたものの、今はもう慣れっこだ。
「良かったー家に居てくれて」
「どうせ暇ですよー」
「ていうか冷房入って無いじゃん!」
「うち入れないタイプだから……入れる?」
「ん、どっちでもいい」
着いたばかりでとても暑いだろうにと思うと、冷房入れておけば良かったなと、少々罪悪感が募る。
なのでたっぷり氷の入れた、麦茶を差し出した。
相当暑いだろう。彼はテーブルの椅子に座ると、被っていた帽子でぱたぱたと扇ぎだす。
やっぱり入れよう。
私はクーラーのリモコンの電源を押すと、次々と窓を閉め始める。
「あー、ごめん」
「気にしない、気にしない」
こちらこそ、申し訳ないです、だ。心の中でひっそりと呟く。
「……それよりも、お昼食べた?」
素麺が茹でている途中だったのを思い出す。まだ彼が食べていないのなら、もう少し麺の量を増やして湯がこう。
「残念ながら、実はまだ。ていうか食欲ないし」
「だめだよー食べなきゃー。今丁度素麺湯がいてたとこだから、一緒に食べよう。決定!」
自分の意見が絶対だと思ったときは、彼の言うことなんて聞かない。
私は素麺をさらにもう一人分取り出し、湯がき始める。
「薬味はー?」
「ありません!」
食欲ないと言いつつ、食べる気満々じゃないか。
りょうの問いを軽く流しながら、私は思った。