上司がキス魔で困ります
「なんだ、もう降りてしまうのか」
残念そうな表情で課長は私を見上げた。
「降ります。こういうの、ダメです……」
「駄目、なのか」
ほんの少し悲しそうに見えたけど、ダメだよ。課長はヨユーだろうけど、私は自分が自分でいられなくなりそうになるの、怖すぎるんだから。
「えっと……お昼作りますから、今度こそそこに座っていてください」
「手伝う」
立ち上がろうとする課長を見て、さっと手のひらで押しとどめる。
「いや、いいです。とりあえずそこに座って……あっ、そうだ」
じりじりと後ずさり距離をとりつつ、私はダダッと蘭ちゃんの部屋に飛び込み、ベッドの上で丸くなって寝ているまめさんを撫で、そしてマットを抱えてリビングに戻った。