上司がキス魔で困ります

 下手に問いただして、自分の思うような答えが返ってこなかったら笑える自信がない。きっとそのあとはギクシャクしてしまうだろう。

 それはすなわち、この関係が終わってしまうということを意味するのだ。


 課長とこんな時間を持つことはなくなる。

 
 考えただけで泣きそうになった。

 唇をかみしめて、それから手を伸ばし、課長の前髪をそっと指先でかきわける。


 いやだ。そんなのいやだ……。
 たとえ一瞬の夢でも、一分一秒だって長く見ていたい。


「……ん」


 課長のまぶたがピクッと動いて、ゆっくりと目が開く。



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