上司がキス魔で困ります
怒涛の展開に驚きつつ、今度はモンブランケーキを口の中に入れた。
軽やかに、まるでダンスでも踊りだすかのように、恋が始まっていく様子を見て、私は完全に飲まれていた。
「なんていうか……世間の人は身軽だねぇ」
「ふふっ。時間は有限だからね。いつまでも続くと思うな、親と金、なんとなくの日常」
「名言ぽい!」
思わずメモりたいくらい、今日の安良田は輝いている。
でもまぁそうだよね。
基本的に親は先に死ぬし、お金はなくなるし、いまのこの日常だって、変わるよね……。
「あー、この流れで思い出したけど、音羽課長」
「えっ!?」
ここで良悟さんの名前が出てくるとは思わなかったので、手が止まる。
挙動不審なところがないよう、おそるおそる尋ねた。
「課長が、なに?」
「とうとうフィンランドに赴任決定らしいね」