上司がキス魔で困ります
「……めぐ。私も殿下も、課長さんの人となりを知らないからさ。めぐから聞いた状況からしか判断できないよ」
「うん……」
「でも、めぐは違うでしょ。めぐは入社してからずっと、課長さんの下で働いてきたわけでしょ。たとえ最初は恋愛対象じゃなかったとしても、課長さんがどんな人か知ってるのは、当事者のめぐだけじゃないの?」
良悟さんがどんな人か、知っているのは私だけ……。
押さえ込んでいた熱い塊のような何かが、胸の奥からこみあがる。
私、馬鹿だ。ほんと、馬鹿だった。
「今日はもう帰りな」
「……うん……うんっ……」
そしてミノリはべそべそ泣く私をさっさとタクシーに押し込んでしまった。
「ごめんね、ミノリ……」
「いいって。私だって散々めぐに恋バナ聞いてもらってたじゃん。正直嬉しいよ。ふふっ」