上司がキス魔で困ります
ごめんね、ミノリ、ありがとう……。
そして驚異のタイミングとしかいいようがないけど、マンションのエントランスに足を踏み入れたところで、スーツ姿の蘭ちゃんに遭遇した。
腕時計を見ると、日付が切り替わる三十分前だ。
蘭ちゃんはたいていこんな時間だから、別に珍しくもなんともないんだけど。
「蘭ちゃん、今帰り?」
「えっ、めぐちゃんこそ、今帰ってきたの?」
「うん。ミノリと飲んでた」
へへっと笑うと、蘭ちゃんは真顔になってツカツカと近づいてくる。
そしていきなり、両腕でぐわっと抱きしめられてしまった。