上司がキス魔で困ります

 ハンカチで涙を拭きながら、隣の安良田の席に座る音羽主任を見つめる。


「私、むいてないんですかねぇ……辞めたほうがいいのかなって……」
「それは、俺にはわからない」
「です、よね……はは」
「だけど、俺は春川くんには辞めてほしくない」
「え?」
「いつも見てるから、わかったことだが……。春川くんの仕事は丁寧だ。確かに奇抜な発想はないが、お客様に安心を与えられるのは新入社員じゃ春川くんぐらいだ。お客様からの感謝の言葉が一番多いのも春川くんだ。だから辞めるなんて思わないでほしい」


 そして主任は、自分用に持っていた缶コーヒーを開けて、煽るように口にすすり、なぜか緊張した様子で私に向き合った。


「あの、それで、こういったことを今いうのは、卑怯かもしれないが……俺は、春川くんのことが……す、」
「ありがとうございますっ!!」
「はっ?」
「音羽主任に認めてもらえて、嬉しいです。ありがとうございます。元気でました。明日も頑張ろうって思えます!」



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