上司がキス魔で困ります

「なっ、なんだい、急に!」
「あの、えっと、お食事はまたの機会に。申し訳ありません」


 とりあえず謝罪して、床に散らばった資料をかがんで集める。

 いつもならもっとやんわり拒否できるのに。触られた瞬間、ゾッとしたのだ。

 けれど部長さんは私の隣にしゃがみ込んで、肩を抱き、また手を握ろうとしてくる。


「……春川くん、彼氏いないって言ってたよね。大人の男と付き合って、見識を広めるチャンスだよ?」
「……やっ……」


 気持ち悪い!

 全身が震えた。悲鳴が出そうになった。
 だけどやめてくださいと叫んでいいの?

 会社に迷惑かかるんじゃないのと、一瞬、躊躇したその瞬間。


「やめてください」


 バタンとドアが開いて、良悟さんが姿を現した。



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