上司がキス魔で困ります

 マンションに戻ると、リビングのテレビで蘭ちゃんが「あれ」を見ていた。

 良悟さんに切られたはずの私の怒りのスイッチがまたオンになる。


「蘭ちゃんっ!」
「お帰り」
「それ捨てたのに! 捨てたと思ってたのに!」


 ソファにゆったりと座って、クラシックでも聴いてるような風情だが、見ているものはそんな高尚なものじゃない。

 蘭ちゃん作成、その名も「めぐメモリーズ」である。

 蘭ちゃんは三歳になる前から電子機器を華麗に操り、生まれて間もない私を映像と写真で残し始めた。

 そして忌まわしき「めぐメモリーズ」は、私が大学を卒業するまで続いたのである。(長すぎる。)

 そして私が泣いたとか笑ったとかいうものから、季節のイベントまで、ありとあらゆる私がそこに残されているのだ。



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