上司がキス魔で困ります
「えっとですね、その企画書作成に三日はかかってしまったので、今日中にご指摘部分をなおせるかな?と思いまして……」
「できると思ったから言っている」
とりつくしまもないというのはこういうことを言うのだろう。
課長の放つピリッとした雰囲気に何も言えなくなった。
「はい……」
やるしかないか……。
企画書片手にすごすごと自分の席に戻ると、
「春川ちゃん、絞られてたね。はいこれおすそ分け」
同じ営業企画部で同期の安良田(あらた)が、隣の席から焼き菓子を一つ、デスクの上においてくれた。
「ありがと。てかこれまたお客様から貰ったの?」
手にとってみれば、焼き菓子のラベルは【MERI】のお客様である某洋菓子店だ。
「新製品なんだって。皆さんでどうぞって言ってたよ」
安良田はそう言いながら、デスクの上に山積みになった焼き菓子を一つ、口の中に入れた。