上司がキス魔で困ります

 彼は我が社のマダムキラーとして評判の男である。


 入社して一年くらいは、女性関係で大問題でも起こすんじゃないかと勝手にヒヤヒヤしていたが、案外公私の区別はつけるタイプらしく、お菓子以上のものは受け取らないようにしているらしい。


「あ、これうまいね。バターの香りがいい。春川ちゃん、もう一個あげる」
「そんなに美味しいなら、一個と言わずたくさんちょうだい」


 図々しく手を出すと、安良田は「そんなこと言うの春川ちゃんくらいだよ」と、クスクス笑いながら、菓子山のほとんどを私に譲ってくれた。

 いいヤツだ。


「さて、やりますか」


 机の上のパソコンをスリープから戻し、Wordを立ち上げる。


 今日ももしかして残業かなぁ……。





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