上司がキス魔で困ります
「行こう」
課長は私の手を引いて、二人の横をあっさりと通りすぎていく。
もちろん私にも村上さんと島田さんのぽかんとした顔が見えたけれど、あっという間に見えなくなった。
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私の手を引いてズンズン歩く課長の背中は、いつもより大きく見えた。
でもなんだか怒ってるみたいだ。
まぁ、どう考えても変な嘘までつかせた私のせいだよね。
声をかけづらい。
でもあまり履き慣れていない靴で、課長に引きずられて歩くのは辛い。頭も痛いし……。
「あの、課長、もう少しゆっくり、歩いてもらえませんか……ごめんなさい……」
強張ったように見える課長の背中に声をかけると、ようやく歩調が緩んだ。