上司がキス魔で困ります
目の上に両腕を交差するように置いて顔を半分隠して、できるだけ明るい声を出した。
「春川くん……」
その声から、どこか労わるような気配を感じる。
助けてもらっておいてなんだけど、このままなんてことないんだと、あっさり忘れてほしいと思うのは私の小さなプライドのせいだろうか。
だからなんてことない風を装って、私は笑うしかない。
「あの、ごめんなさい。ほんと、変なとこ見られちゃった……あの、私、中学三年の時ちょっとだけいじめられてて、それで……今でも苦手で。まぁ、向こうは忘れてるくらいだし、大したことじゃないんですけどねー……はは」
きっかけも原因もわからない。
ただ或る日突然ターゲットにされて、無視されるようになった。