上司がキス魔で困ります

 けれど音羽課長はそんなことは大した問題ではないとでもいうように、きれいな指先で私の頰を流れる涙をぬぐい、両手で頰を挟んで私を見下ろす。


 ていうかさ。そんなマジマジと見ないでほしい。

 泣き顔が美人なのは美人だけだからね!
 一般人は普通泣いたらブスだからね!


「いま、わたし、ひどいかお、してます、よね……」
「いや、いつも通りだな。新入社員の頃、よくそんな顔して泣いていただろう。可愛いなと思っていた」


 音羽課長はくすりと笑って、それから身をかがめ私の額にキスをする。


 まさか音羽課長が私の泣いてばかりの新人時代を知っていたとは。

 っていうか、こんな自分史上最高にブスに違いない泣き顔で、いつも通り可愛いと言われる虚しさよ。

 おもわず笑ってしまった。


「……ふふっ、課長、変なの」
「笑った。めぐ、可愛い」


 そう言って目を細めて私を見下ろす課長。


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