上司がキス魔で困ります

 さすがに部屋の真ん前まで送ってもらうわけには行かず(だって今日は蘭ちゃんがいるからね。)、改札を出る手前で、さようならをした。


「じゃあまた明日」
「はいっ。お気をつけて!」


 ぶんぶんと手を振る私を見て、課長は微笑み、きびすを返す。

 そして私は、そんな課長の背中が消えても、ずっと、その場から離れることができなかった。


 また明日、かぁ……。
 この瞬間は寂しいけれど、また明日も会えると思うと、胸がはずむ。
 そして明後日は会社に行けばまた課長に会えるのだ。

 今更ながら驚いた。

 えー、ちょっと待って。これってすごくない!?
 毎日会えるってすごくない!?


 驚きのあまりしばらくぼんやりと立ち尽くしていたが、バッグに入れているスマホがメッセージを受信して震えた。


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