上司がキス魔で困ります

「蘭ちゃんは顔だけじゃない」


 テーブルの上に剥いたリンゴを乗せると、
「めぐちゃんっ!」
 蘭ちゃんはぎゅうぎゅうと私を抱きしめる。


「めぐちゃんくらいだよ、俺にそんなこと言ってくれるの」
「いや、そんなことないって。蘭ちゃんはめちゃくちゃ努力してるし、結果を出してるじゃない。みんなわかってるよ」


 とんとん、と背中を叩いて体を離し、それからネクタイを結んであげる。

 っていうか。蘭ちゃんは彼女いないのかな?
 こういうの彼女の役目じゃない?


「ねぇ、蘭ちゃんは付き合ってる人とかいないの」
「いないよ。忙しくてそんな暇ないし」
「好きな人とか」
「めぐちゃん」
「や、そうじゃなくて」


 そんなきっぱり言われても。



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