あったか☆ドーナッツ
カバンからスマホを取り出し、実家の番号をタップする。数コールで出た母にこれから帰るとひとことだけ告げる。
そうして水色のドーナツは私の手元に戻ってきた。食べろよ、と博人が顎でしゃくる。ひとくち頬張ると口の中だサクリと音がした。この素朴な味……懐かしい。
『ほうら、できたよ』
よみがえるのは母の声。
『違う! こんなんじゃない!』
声を荒げた私に驚いた顔をして、その直後、さみしそうな表情になった母。
『ごめんね梢恵』
近所にできたドーナツショップのドーナツが食べたいといった私に母は自宅にあった材料でドーナツを作ってくれた。でも私は学校で話題になっていたそのお店のドーナツが食べたかったのだ。300円で1枚渡されるカードを集めてもらえる麦わらトートが欲しかった。母は不格好で大きさのそろわないドーナツを乗せた皿を台所に戻した。そのあと母が買い物に行った隙にドーナツを食べた。素朴なドーナツの味。
ほろり、と頬の上を涙が伝う。
そうして水色のドーナツは私の手元に戻ってきた。食べろよ、と博人が顎でしゃくる。ひとくち頬張ると口の中だサクリと音がした。この素朴な味……懐かしい。
『ほうら、できたよ』
よみがえるのは母の声。
『違う! こんなんじゃない!』
声を荒げた私に驚いた顔をして、その直後、さみしそうな表情になった母。
『ごめんね梢恵』
近所にできたドーナツショップのドーナツが食べたいといった私に母は自宅にあった材料でドーナツを作ってくれた。でも私は学校で話題になっていたそのお店のドーナツが食べたかったのだ。300円で1枚渡されるカードを集めてもらえる麦わらトートが欲しかった。母は不格好で大きさのそろわないドーナツを乗せた皿を台所に戻した。そのあと母が買い物に行った隙にドーナツを食べた。素朴なドーナツの味。
ほろり、と頬の上を涙が伝う。