あったか☆ドーナッツ
でもぼくは運動も全然できないし、自慢できる趣味もない。

もともと話上手でもない。こんな面白みのないぼくの周りには誰もいない。休み時間は自分の席で消しゴムを転がして時間をつぶしている。

だから月に一度回ってくるお話当番が一番の恐怖だった。本もたまたま図書室でたまたま見つけて読んだ本を紹介した。カエルのポンタが冒険の旅に出る話だったんだけど、ポンタが旅先で見つけたガラスの石がきらきらと光ってきれいだったのが気に入ったんだ。

クラスで一番背の高い俊平くんは一番チビのぼくを怖い目で睨みつけた。


「なんとかいえよ!」


ばくは怖くて目を逸らして床を見た。


「……ご、ごめん」
「時間返せよ。おれ、忙しいのに」
「……うん」
「お前、ごめんとうんのほかは何にも言えねえのかよ!」


きらきらするガラスの石は俊平くんには面白くなかったらしい。

ひっく、ひっく、ひっく、ひっく。


「また泣きやがって。フン!」


どん、とぼくの肩をつきはなして、俊平くんは教室を出て行った。
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