ネコと上手に付き合う方法
「西谷先輩、見て!ちょっと泳げるようになった!!」
小乃美ちゃんは弾けんばかりの笑顔で修得したての泳ぎを俺に披露した。
ま、俺が教えたんだけどな。
「凄い、凄い。」
頭を撫でると満足そうな顔をするところも、飼っていた猫そっくりだ。
でも、もう蛇を献上されるのはごめんだな。
「モコ…」
「モコ?」
あ…
「ごめん、ごめん。前に飼ってた猫の名前。小乃美ちゃん見てたら思い出しちゃって。」
「え!?先輩の家、猫飼ってるんですか?」
「いや、昔ね。その猫が死んだ時、凄く悲しかったからそれから飼うの止めた。」
「なぁ~んだ。」
あから様にガッカリする小乃美ちゃんと海から上がって並んで腰を掛ける。
「え、何、猫好きだったの?」
「変ですか?」
「いや、まんまだけど、一言もそんなこと言ってなかったじゃん。」
「多分、先輩より好きです。」
それはどっちの意味だ?
「ふ~ん。で、小乃美ちゃんは猫飼ってるの?」
「それは勿論!って言いたいとこですが、今住んでる所では飼ってないです。昔は……いっぱい飼ってました。」
「へぇ~。」
「生まれた時から猫が居たから、居ることが当たり前だったんですけど…」
小乃美ちゃんは声のトーンを変えず話し続けた。
「去年、親が離婚して母親と新しい家に引っ越してから、猫は飼えなくなりました。」
「え……?」
「だから、西谷先輩のお家に猫が居たら触らせてもらおうと思ったんですけど、残念!」
小乃美ちゃんはニコッと笑顔を俺に向けたかと思うと、再び海へ走って行った。
バカだな。そんなに無理に笑おうとしなくたっていいのに…