ネコと上手に付き合う方法
<おまけ>
おれの名前は大翔。現在高校2年生。彼女なし。でも、好きな子ならいる。
ようやく俊をスカウト出来て、おれ達のバンドは新しい一歩を踏み出そうとしている。
そんな日にもうひとつ記念日を作ろうと決心していたのに、俊と小乃美ちゃんの後ろ姿を亜璃ちゃんと一緒に見送っていたら、おれの口は勝手に開いていた。
「亜璃ちゃんは、これで良かったの?」
「どういう意味ですか?」
怪訝そうに聞き返す亜璃ちゃん。でも、おれは知ってるから、聞かずにはいられなかったんだ。
「亜璃ちゃんも好きだったでしょ?俊のこと。見てて辛くないの?」
「!?」
真っ赤になる亜璃ちゃんの表情は、肯定しているようなものだった。
「いいなぁ~俊は。」
おれはチクリとした胸の痛みを誤魔化すかのように腕を頭の後ろに組み、夜空を仰いだ。
「なんで…分かったんですか…?」
「ん?」
おれにバレていたことが相当恥ずかしかったのか、亜璃ちゃんはうつ向きながら聞いてきた。
「そんなの…」
その姿に胸の痛みが増す。
「ずっと亜璃ちゃんを見てきたからに決まってんじゃん。」
「……」
ヤバイ…
つい真面目に言ってしまった。
反応がないとか、すっげー怖いんだけど…
おれは恐る恐る亜璃ちゃんを横目で見ると、思いっきり見上げられていた。
慌てて視線を空に戻す。
「だから~」
居たたまれなくていつもの調子で言い直そうとした時、
「“好き”とは、違うんです。」
おれと同じように空を見ながら亜璃ちゃんがそう言った。
「憧れ…というか、落ち着く。」
俊と居たら落ち着くのか…
あぁ、すっげーモヤモヤする。
「あの二人を見てると、とても穏やかな気分になれるんです。」
ん?二人?
「え?あれ?どういうこと?」
全くもって想定外な回答に、おれの頭はプチパニック。
「俊のこと、好きなんじゃないの?」
「好きですよ。小乃美も西谷先輩も。」
亜璃ちゃんはいつものようにふふふと笑うと、おれの前に立って
「もちろん大翔先輩も。」
満面の笑みを見せた。
……
…………
それ、
反則じゃね?
「期待しちゃうんだけど…」
顔を背けたおれが小さく呟いた言葉に、
「待ってんのに…」
亜璃ちゃんがそう呟いていたのを知るのは、もう少し先の話。
《おしまい♡》