ネコと上手に付き合う方法
しばらくすると、彼女が目を覚ましたのか何か動いている気配がした。
「んにゃ!?」
猫のような声に、俺はパッと目を開けた。
「あ…れ?もしかしてこれ、先輩のですか?」
なんだ、この子か。
「あぁ。女の子がそんな格好で寝てたらダメだろ。」
「先輩は優しいんですね。」
ふわっと笑う笑顔に、一瞬目を奪われた。
「“西谷 俊”…先輩?」
彼女は上着の内側に刺繍されていた漢字を口にする。
「ニシヤ シュンな。君は?」
「佐々木 小乃美です。」
「コノミ?」
「小さいに乃木坂の乃に美しいです!」
「へぇ~可愛い名前だね。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言いながら上着を返す小乃美ちゃんは、仄かに頬を赤らめていた。
顔に出やすくて嘘がつけないタイプだな。きっと。
「うん、次からはもうちょっと寝る場所考えた方がいいよ。」
「でも、私、日向ぼっこが好きで…ここが一番気持ち良いんです…!」
その気持ちは、分からないでもない。
「でもほら、小乃美ちゃん可愛いから変な男に襲われるかもしれないだろ?」
「そんなことないですよ!」
う゛ーん、これはどんなに説得しても止める気がないな…。
しょうがない、俺が見張りに来てやるか。
「ねぇ、ところで小乃美ちゃんさ、なんで木に登ってたの?」
「えーっと、高い所から下を眺めたくて…」
「はい……?」
目をぱちくりさせて聞き返すと、小乃美ちゃんは真っ赤になってうつむきチラッと俺を見た。
「笑うなら笑って下さい。昔から変わってるってよく言われるんです。」
「笑うと言うより……猫だね。さっきも丸くなって寝てたし。もしかして小乃美ちゃんって化け猫?」
「ち、違います!生まれた時から人間です!!」
必死に否定する小乃美ちゃんは本当に可愛いくて、
「冗談、冗談。でも俺、好きだよ。猫。」
そう言うと、再びうつむく彼女。
「西谷先輩、“好き”って簡単に言ったらダメです。」
いや、猫の話だし。
「勘違いした?」
その一言が気に触ったのか、小乃美ちゃんはすっと立ち上がり、
「西谷先輩って、たちが悪い!」
そう言い放って走り去って言った。