君のことが、どうしようもなく好きです
一日目で授業も少なく、早めの帰路についた。


「なぁ響。そーいや今日、全員揃ってなかったよな。お前の隣だっけ?」


「ああ、そういえばそうだったな。」


そこで、名前の最後の文字しか見ていないのを思い出した。「音」という字…ぱっと見ただけでは、いつか、見たことのある名前だった気がする。


「あれ、覚えてねー?小崎 詩音(こざき しおん)さんだろ?」


「…なんでお前はフルネームまで知っているんだ」


そもそもお前の後ろにある席だぞ。いつの間に見ていたんだ?


響は一言言いたくなったが、奏は話を勝手に変え、
「今日の晩飯何かなー」
と全く関係のないことを言っている。


お前のその切り替え方は小学生か。だんだん相手をするのも面倒くさくなってきた。


いちいち気にしていると時間の無駄だと思い、響は喋ることをやめた。 そんな難しい顔をした響に、奏は唐突に口にした。


「…ん?なんでって顔してんね。小学校一緒だったろ?ちょっと病気がちで、休み時間とかあまり遊べなかったけど」


思い出した。女子のどのグループにも入っていない、おとなしそうな女子だった。よくクラスは同じになった気がする。直接聞いたことはなかったが、そういう理由だったのか。
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