君のことが、どうしようもなく好きです
隣の席について話していると、福原さんについて思い出した。


「そういえば、奏の隣って…福原さん、だったか?」


「そーなんだよ。えっ、もしかして、俺の話聞いてくれんの?いやぁ、響なら聞いてくれると思ってたんだけどなっ!」


しまった。奏が満面の笑みで喋ることにやる気を出したのだ。こうなると後がめんどくさいと、響はたった今の行動を恨んだ。


奏は喋りだすと、永遠に喋り続けるたちである。後は分かっている。奏のノロケ話を右から左へ流すように聞き流すだけだ。


「俺さぁ、福原さんに…一目惚れしちゃったかも、マジで」


「あ、そう。よかったね」


「おい、応援してくれねーのかそこは。恥ずかしさを耐え抜いてカミングアウトしたのに!」


「…珍しく今回は本気なんだな」


奏はこう見えて優柔不断だ。どっち付かずな態度から女子を泣かせていることは多い。迫られるとその場のノリでOKしてしまうため、響から見るととっかえひっかえしすぎだろと思っている。


だから女子にひとめぼれして猛アピールというのは、奏にしては珍しく、驚いていた。

「…だから、福原さんと出会えたし、響もいるし、今日はすっげーいい日だったな!」


「俺はそうでもない。お前というやつをまた一年間目にしなければならないと思うと、諦めしかない」


響のせめてもの抵抗を無視し、奏は全く気にせず話し続ける。福原と今日の休憩時間でこんな話をしたとか、音楽が趣味らしいとか、とにかく長い間だった。
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