役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
「残念ながら、俺は弱いですからねぇ」

俺は剣をおろし両手をあげた。
試合終了の合図だ。

まっすぐにこちらを見つめるエレーナの瞳から目を逸らし、空を仰いだ。
抜けるような青空が眩しくて、思わず目を細める。
吹きつける風に初夏の匂いを感じる。

「ほらね、やっぱり稽古は必要だわ」

エレーナの明るい笑い声が乾いた風に乗って耳に届く。


俺は剣の稽古なんて疲れることは大嫌いだった。
わざわざ痛い思いはしたくないし、誰かを痛めつけたいとも思えなかった。

段々とさぼりがちになり、最近ではさっぱり剣を握ることはなくなっていた。


エレーナに付きあって久しぶりに動かしてみた身体はあっという間に悲鳴をあげて、関節のあちこちが痛む。


にも関わらず・・・

うーんと空に向かって大きく伸びをするエレーナの姿を眺めていると、少しだけ、ほんの少しだけ、楽しいような気がしてくるから不思議だ。
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