役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
「ひぃ。も、申し訳ございませ・・」

テオの顔は幽霊でも見たかのように凍りつき、土下座するような勢いで頭を下げた。

腹を抱えて笑っている俺をエレーナはジロリと睨みつけ、テオの手を取って、優しく微笑んだ。

「ごめんなさい。 王女らしくしていない私が悪いのだから、気にしないでくださいね」

ふぅん、 テオのような男と並ぶとちゃんと王女様に見えるものだな。

目の前の二人は姫と姫を守る騎士のようだった。
まぁ、随分と庶民的な姫と武骨な騎士ではあるが。


「おい、噂とは随分違くないか」

テオが肩を寄せ、小声で囁く。
役立たず姫の噂のことだろうと俺は察した。

「見ての通り、噂ほどお馬鹿さんじゃないようだよ」

「それに、噂よりずっと綺麗じゃないか」

「・・・まぁ、素朴な可愛らしさはあるかな」

目を輝かせて軍馬の群れを眺めるエレーナを横目に見つつ、答えた。

「自分を基準にするな、アゼル。
お前と比べたら、この国から美人がいなくなっちまう」

テオは俺の肩をポンとたたき、渋い顔でそう忠告する。

「それは一理あるな。 お前もたまには賢いこと言うじゃないか」
< 15 / 43 >

この作品をシェア

pagetop