役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
「あら。香ばしくて美味しい!!
いつものパンとは全然違うけど、こっちも美味しいわ」

「でしょう? しかもこのパンは腹持ちもいいんです」

安くて、美味くて、腹持ちがいい。
主食としてこれ以上に最適なものはないだろう。


パンにつづいて、エレーナは大麦の入ったトマトのスープに口をつけた。

「これも王宮のスープより美味しいわ」

彼女の正直すぎる感想に声をあげて笑ってしまった。

「こういう食堂は朝採ってきた野菜をすぐに調理できますからね。
ね? 高価な方が美味いとは限らないでしょ」

「ほんとね」

「だから、貴方がしゅんとする必要はないんですよ。 元気を出して、たくさん食べてください」

いつの時代も庶民はたくましく生きているものだし、結局は時代を作っていくのは彼らなのだ。


「・・・ありがとう、アゼル」

はにかむように笑う彼女はとても可愛らしかった。


「さて、お腹も膨れたことですしお待ちかねのお買い物に行きましょうか」

俺は女性の好みそうな衣装や宝石、香油などを扱うお店の集まるエリアにエレーナを案内した。

エレーナは片っ端からお店を見て回った。

俺は邪魔をしないよう、少し離れたところから様子をうかがう。

初めての買い物を心の底から楽しんでいるエレーナの姿を見ていると、自然と口元が緩んだ。

いつのまにか、彼女の世話係が板についてしまったようだ。
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