役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
2章 近づくほどに遠ざかる
◇◇
いつからだったろうか。
俺を呼ぶあの柔らかい声が、特別な響きを持つようになったのは。
俺を見つめるあの明るい瞳が、どうしようもなく輝いて見えるようになったのは。
自分の中でこれまで知らなかった感情が大きく膨れ上がっていく。
必死に見ない振りをしても、それは存在感を増していくばかり。
この気持ちを何と呼ぶのかーー。
今はまだ、知りたくなかった。
キィーーーン。
空を切るような鋭い音とともに、テオの掌中から弾き出された剣が宙を舞う。
「今日も俺の勝ちだ」
愕然とするテオに向かって、俺はニヤリと笑って宣言した。
「くっそー。 アゼルに負ける日が来るとは思ってもいなかったぜ」
心底悔しそうに、テオは拳を握り締める。勝負を終えた俺達は石壁を背もたれに、並んで腰を下ろした。
ずいぶんと失礼な発言だが、テオの言い分ももっともだった。
数年前までは俺たちの実力には天と地ほどの差があった。
もちろんテオが天で、俺が地。
「筋がいいのは分かっちゃいたけど、こんなに短期間で追い越されるとはなぁ。ティーザ家の血は伊達じゃなかったってことか」
テオは諦めたようにそう言って、空を仰いだ。
本当は俺がテオに勝てる理由はただ一つ。テオが単純な性格ゆえに攻撃パターンが読みやすいからなのだが・・これは黙っておこう。
昔はテオの攻撃がいくら読めたって塞ぎきるだけのスピードもパワーも俺にはなかった。
対抗できるだけの力をつけたのは、俺の努力だ。血筋は関係ない・・・と思いたい。
いつからだったろうか。
俺を呼ぶあの柔らかい声が、特別な響きを持つようになったのは。
俺を見つめるあの明るい瞳が、どうしようもなく輝いて見えるようになったのは。
自分の中でこれまで知らなかった感情が大きく膨れ上がっていく。
必死に見ない振りをしても、それは存在感を増していくばかり。
この気持ちを何と呼ぶのかーー。
今はまだ、知りたくなかった。
キィーーーン。
空を切るような鋭い音とともに、テオの掌中から弾き出された剣が宙を舞う。
「今日も俺の勝ちだ」
愕然とするテオに向かって、俺はニヤリと笑って宣言した。
「くっそー。 アゼルに負ける日が来るとは思ってもいなかったぜ」
心底悔しそうに、テオは拳を握り締める。勝負を終えた俺達は石壁を背もたれに、並んで腰を下ろした。
ずいぶんと失礼な発言だが、テオの言い分ももっともだった。
数年前までは俺たちの実力には天と地ほどの差があった。
もちろんテオが天で、俺が地。
「筋がいいのは分かっちゃいたけど、こんなに短期間で追い越されるとはなぁ。ティーザ家の血は伊達じゃなかったってことか」
テオは諦めたようにそう言って、空を仰いだ。
本当は俺がテオに勝てる理由はただ一つ。テオが単純な性格ゆえに攻撃パターンが読みやすいからなのだが・・これは黙っておこう。
昔はテオの攻撃がいくら読めたって塞ぎきるだけのスピードもパワーも俺にはなかった。
対抗できるだけの力をつけたのは、俺の努力だ。血筋は関係ない・・・と思いたい。