役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
「しちまえよ、結婚。今すぐにでも」

テオはのんびりした口調で、あっけらかんと言い放った。
太い腕をうーんと空に突き上げて、呑気に背中のストレッチなんかしている。


「お前な・・今、俺の話の何を聞いてた!?」

あまりの会話の噛み合わなさに、こちらの方が脱力してしまう。


「政治の難しい話は俺にはわからんけどさ〜欲しいものを欲しいと言って、何がダメなんだ?」


なんてシンプルな答えだろうか。
あまりに単純明解過ぎて、きっと俺には一生かかっても導き出せない。


「・・・俺、生まれて初めてお前を羨ましいと思ったよ」

思わず漏らした俺のぼやきを、テオは快活に笑い飛ばした。


「おっ、王女が欲しいってとこは否定しないんだな。

エレーナ王女だってさ、国王なんて厄介な立場を引き受けるよりお前の妻になる方が幸せなんじゃないか?」

テオはお馬鹿の癖して、こんな風に物事の核心をつくことがよくある。
野生の勘ってやつだろうか。


俺が恐れているものは、反王妃派の貴族なんかじゃなかった。

エレーナ自身の気持ち。

彼女が何を望んでいるのか、一番肝心なところにどうにも自信をもてないでいた。

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