役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
「そのなぁ、相手がなぁ・・・」

不器量なのだろうか?
それとも、年増か?

あぁ、身分が低いのかも知れないな。


「婚約者が誰であっても、愛するよう努力しますよ」

婚約者なんて誰だってよかった。

どうせ、俺の方が美しいに決まっているしね。


それでも言い淀む父に代わり、ミハイル兄上が口を開いた。


「お前の婚約者はエレーナ・キトニア。
第一王女のエレーナ様だ」


聞き違いだろうか。

どんな相手だろうと一向に構わない。

本心からそう思っていた俺ですら、これには驚き、抗議の声をあげてしまった。


「・・・あまりにも身分が違い過ぎやしませんか?」

王女ならば他国の王族か、最低でも、五大公爵家と呼ばれる国内の大貴族に嫁ぐのが筋というものだろう。

ティーザ家ではあまりにも見劣りする。

ましてや、俺はーーー。


「私もそう申し上げたのだが、アンヌ王妃がどうしてもとおっしゃってな」

ーーアンヌ王妃。

前王妃のエリン様が亡くなられた後に、大国サレフから嫁いできた陛下の現在の正妃だ。

今この国で最も権力を持っているのは気の弱いところがある陛下ではなく、サレフの威光を笠にきたアンヌ王妃だった。


つまり・・・


「噂の役立たず姫の厄介払い先として、我がティーザ家が選ばれたわけですね」


領地は王都から遠く離れた田舎、中央での権力は0に等しいうえに当主のティーザ侯は野心の欠片も持たない男。

王女を嫁がせたところで、毒にも薬にもならない。

賢しい王妃様の考えそうな事だ。
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