役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
「こんにちは」
久しく挨拶などされる事はなかったので、私は彼のその言葉にとても驚いた。
自分ではない他の誰かに話かけているのかと、思わずあたりをキョロキョロする。
「こんにちは。エレーナ王女殿下」
彼はもう一度、ゆっくりとそう言った。
柔和で人の良さそうな笑顔。
黒髪は短く刈り上げられ、よく陽に焼けた小麦色の肌をしている。
軍人らしい引き締まった身体には濃紺の王宮護衛官の制服がよく似合っていた。
年齢はどのくらいだろうか。
父である陛下より少し若いくらいくらいだろうか。
「こんにちは。貴方は誰?」
「殿下の宮の護衛官です。ハウルと呼んでください」
そう言って、彼は私に跪いた。
私とハウルの交流はこうして始まったのだ。
ハウルは週に一度か二度、ふらりと訪れては私に様々なことを教えてくれた。馬の乗り方も剣の扱い方も全てハウルに教わったのだ。
そんな日々が半年程続き、ハウルがただの王宮護衛官ではないことにも薄々気がついていた私は意を決して尋ねてみた。
「ねぇ、ハウル。なぜ貴方は誰も見向きもしない私によくしてくれるの?」
愛馬の手入れをしていたハウルは石畳の階段にちょこんと座っていた私を振り返る。
「‥‥ある人に貴女を助けるようにと頼まれたからです。それから、私自身が殿下といると楽しいからでしょうね」
「そう‥‥」
私はそれだけ言うと、それ以上は何も聞かなかった。
だって、ある人が誰かなんて聞かなくてもわかる。
母とエリン王妃に決まっている。
私を大切に思ってくれる人はあの二人しかいないのだから。
久しく挨拶などされる事はなかったので、私は彼のその言葉にとても驚いた。
自分ではない他の誰かに話かけているのかと、思わずあたりをキョロキョロする。
「こんにちは。エレーナ王女殿下」
彼はもう一度、ゆっくりとそう言った。
柔和で人の良さそうな笑顔。
黒髪は短く刈り上げられ、よく陽に焼けた小麦色の肌をしている。
軍人らしい引き締まった身体には濃紺の王宮護衛官の制服がよく似合っていた。
年齢はどのくらいだろうか。
父である陛下より少し若いくらいくらいだろうか。
「こんにちは。貴方は誰?」
「殿下の宮の護衛官です。ハウルと呼んでください」
そう言って、彼は私に跪いた。
私とハウルの交流はこうして始まったのだ。
ハウルは週に一度か二度、ふらりと訪れては私に様々なことを教えてくれた。馬の乗り方も剣の扱い方も全てハウルに教わったのだ。
そんな日々が半年程続き、ハウルがただの王宮護衛官ではないことにも薄々気がついていた私は意を決して尋ねてみた。
「ねぇ、ハウル。なぜ貴方は誰も見向きもしない私によくしてくれるの?」
愛馬の手入れをしていたハウルは石畳の階段にちょこんと座っていた私を振り返る。
「‥‥ある人に貴女を助けるようにと頼まれたからです。それから、私自身が殿下といると楽しいからでしょうね」
「そう‥‥」
私はそれだけ言うと、それ以上は何も聞かなかった。
だって、ある人が誰かなんて聞かなくてもわかる。
母とエリン王妃に決まっている。
私を大切に思ってくれる人はあの二人しかいないのだから。