役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
◇◇
ほどなくして、エレーナ王女は数名の護衛をともない我がティーザ城へとやってきた。


誤解のないように断っておくと、ティーザ城は昔からの名残で領民からお城と呼ばれてはいるが、ただのこじんまりとした古い屋敷だ。


元は赤茶色だった外壁のレンガは焦茶にくすんでいるし、門扉には成長しすぎた蔦が幾重にも絡みついていた。
裕福さを誇示するため、貴族の城には必ずある、華やかな庭園ももちろん無かった。

王都にある豪華絢爛な王宮や大貴族の城とは比べものにならないだろう。


その王宮暮らしから一転、こんな田舎の古い屋敷で暮らさなくてはならなくなったエレーナ王女に同情しながら、俺は面会の部屋の扉を叩いた。


「どうぞ、お入りください」

想像より、ずっと幼い声だった。
王女というイメージから、もっと高飛車な物言いをするのだと思っていたが・・

噂通り、本当にお馬鹿さんなのかも知れないな。

そんな無礼な想像をした事はもちろん顔に出さず、俺は恭しく部屋に入り、声の主の足元に跪いた。


「堅苦しい作法はいらないわ。 顔をあげてくれる?」

許しを得て、ゆっくりと頭を上げる。

さて、二つの噂は果たしてどちらが正しいのだろうか。
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