役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
「第一王女エレーナです。あなたがアゼルね?」

キトニア人らしい栗色の髪に栗色の瞳。
ふっくらと丸い頬と小さな唇は健康的な赤みを帯びている。

王女にしてはあまり飾り気のない深緑色のドレスは彼女によく似合っていた。



・・・なるほど。

愛らしいといえば愛らしいが、王女というよりは農夫の娘という方がしっくりくるような・・・


こう言っちゃ何だが、俺の方がよっぽど・・・


「私よりあなたの方がやんごとなき身分のお姫様みたいだわ。
さすがはティーザ家の至宝ね」


心の声を見透かされ、さすがの俺もどきっとした。
慌てて、言葉を返す。

「お褒めいただき光栄ですが、エレーナ王女殿下の方がずっとお美しくいらっしゃいます・・・・と言ったら、嫌味でしょうかね?」

砕けた態度をとったのは、俺の言葉の途中から王女が笑いを堪えきれずに吹き出したからだ。


「クスクス。 えぇ、とっても嫌味だわ。
それを分かってくれる人で良かった」

王女の瞳は好奇心でキラキラと輝き、くるくると変わる表情は生命力に満ち溢れていた。


二つの噂はどちらも正解で、どちらも不正解だと俺は結論付けた。

絶世の美女ではないけれど、彼女の放つ光は人を惹きつける。とても強い光だ。

王女としては奔放といおうか・・たしかに変わり者かも知れないが、きらめくような知性の片鱗を感じさせた。
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